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なぜ『魔法少女まどか☆マギカ』はただのアニメ作品ではないのか

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今更ながら2011年のアニメ作品「魔法少女まどか☆マギカ」にハマっていて、2ヶ月で8周しました。 (正確にはアニメ版2周、劇場版前後編6周、叛逆2周です)

ちょうどAmazonプライム・ビデオでも配信開始されましたので、2016年の総まとめとして、一体この作品のなにが素晴らしいのか振り返ってみたいと思います。

5年前の作品なので特に気にしませんが、以下ネタバレ注意です。

対象作品

企画

まず本作は企画の段階でかなりクレイジーです。

いったい誰がこの布陣で可愛らしい魔法少女アニメを作ろう等と言い出したのでしょうか。

ファンシーな絵柄に血みどろなシナリオ、グロテスクな演出、切なくメロディックな音楽、決して交わるはずのなかったこれらの要素を新房昭之監督が ダーク・ファンタジー としてまとめ上げた作品が『魔法少女まどか☆マギカ』です。 これだけでも、このアニメ作品が稀有な存在である事が分かります。

脚本担当の虚淵玄氏は公式サイトのスタッフコメント にて「テレビの前の皆さまが暖かく幸せな気持ちで一杯に」などと供述しており、明らかに狙ってやっている事が分かります。

なお「可愛い絵柄で血みどろ魔法少女モノをやろう」というコンセプトが狂気を感じるのみであり、企画としては筋が通っています。 メインキャラクター5人は魔法少女モノらしい特徴的な名前とテーマカラーで頭に入りやすく、魔女やグリーフシードあたりの設定もシンプルで理解しやすいです。

まるで幼児向けアニメかのような文法通りの設定の上で、救いようのないハードな展開が繰り広げられるのが本作です。

血も涙もない殺伐としたシナリオ

本作について最もよく言われているのは 「とりあえず3話まで見ろ」 だと思います。 確かに第3話は衝撃的な内容を含みますが、それはスタートラインに過ぎません。

第1,2話はいわばミスリードパートです。 第3話『もう何も怖くない』の結末からストーリーの風向きがガラリと変わります。

実際、第3話がすごいのではなくて 1,2話が不気味なほど平和なだけ だったという事に気づいた結果、私はこの作品を何周もしていました。 過度に清潔感あふれる学校(実際、刑務所がモデルだそうです)、鹿目家しか描写されない家族関係、異質存在であるキュゥべえの友好的な姿勢など、すべてが第3話以降を引き立てるために作られたハリボテの平和演出なのです。

第3話の 主要人物が首を食いちぎられて死ぬ のも十分にショッキングな展開ですが、ほかのメインキャラクターも人間関係のこじれが積み重なって魔女化して死亡魔女化した仲間を救おうとして相打ち、そして 守るべき瀕死の親友を止むを得ず射殺する など目も当てられない結末が続きます。

この第3話を軸としたスイッチの入り方こそが、本作品の大きな演出のひとつです。

なお、劇場版前後編では第1,2話に相当する部分の大半がカットされており、よく言えばスピーディですが、このミスリードにあたる要素がほとんど欠落しています。 第3話まで待つのがじれったくて離脱するのもやむない作品なので、これは一長一短だと思います。

さやかちゃん

陰惨な展開を繰り広げつつも、最終的には劇中で命を落とした巴マミ佐倉杏子も生存する世界線へと書き換えられ、物語はハッピーエンドを迎えます。 しかし さやかちゃんは死にます

鹿目まどかが起こした奇跡で作った"魔女のいない世界"でも最終的に さやかちゃんは死にます

いや、おかしいでしょ。 なにが「暖かく幸せな気持ちでいっぱいになれる」だよ。人が死んでんねんぞ!

佐倉杏子の「やっと友達になれたのによ...」という言葉でフォローが入るものの、敵対していた佐倉杏子暁美ほむらとの和解はついに描かれることなく物語の幕は閉じてしまいます。 「人との気持ちのすれ違い」が大きなテーマである本作品らしい、最後まで一貫した終わり方です。

全員が生き返ってハッピーエンド!...なんて安っぽいエンディングは無いどころか メインの魔法少女5人が共闘するシーンは全12話通して一度もない という、この絵柄でありながら一切の媚を売らない硬派な姿勢が本作品の特徴です。 それを象徴しているのがさやかちゃんという存在と、その結末なのです。

サウンドトラック

魔法少女まどか☆マギカ」のサウンドトラックはiTunesで配信されていますが、残念ながら後半の一部楽曲が収録されていません。 すべて揃えるにはCDアルバムを入手する必要があります。

また、「劇場版前後編」のサウンドトラックは限定生産のBlu-rayの特典としてしか手に入りません。

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同じく、「劇場版新編」のサウンドトラックも限定生産Blu-rayの特典です。

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TVアニメ版も劇場版も良い曲が多いので、すべて入手する他ありません。

さやかちゃんのテーマ

サントラには、俗に「さやかちゃんのテーマ」と呼ばれる美しい曲があります。

  • TVアニメ版
    • Conturbatio
    • Decretum
  • 劇場版前後編
    • Collapse
    • Witch World #2
    • (She is a witch)
  • 劇場版新編
    • (Holly Quintet)
    • (misterioso)

ビブラフォンっぽいゆっくりとしたテンポの『Conturbatio』は、病院での上条恭介との会話シーンで流れるのが印象的です。

実際に彼の腕が治ってバイオリンが引けるようになると、曲にも弦楽パートが追加された『Decretum』というアレンジに変わるという演出があります。 この『Decretum』が物語中盤の各要所、主にさやかちゃんの運命を左右するシーンで使われており、さやかちゃんのテーマとして視聴者の心に刻まれることになったようです。

劇場版さやかちゃんのテーマ

劇場版前後編では『Decretum』のアレンジとして『Collapse』と、さらにボーカルパートの追加された『Witch World #2』という2曲が追加され、彼女の悲劇的な運命を一層彩るようになりました。

さらに、TVアニメ版で『Decretum』が使われていたシーンの中でもとりわけ印象的だった魔女化シーンは『She is a witch』という破滅的な新曲が追加されました。

逆に、最終盤にて鹿目まどか魔法少女の契約をするシーンで『Sis puella magica』が使われていたのが、劇場版では『Decretum』に差し替えられていて、作品全体を象徴する1曲へと立場が上がっています。

劇場版新編 叛逆の物語では『Holly Quintet』および『misterioso』の途中で、本曲のフレーズが使われています。

さやかちゃんのテーマも、本作品を象徴する楽曲だと言えます。

まとめ

さやかちゃんの使い魔になりたい

参考文献

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