【著作権】合唱曲を自由に利用するための知識
2015年1月1日、合唱界において『鷗』でよく知られる 三好達治 の作品がパブリックドメイン入りしたそうです。
http://kasamashoin.jp/2015/01/201511.html
ついに自由は彼らのものになりました。
ところで、合唱曲を利用する自由は誰のものでしょうか? 合唱音源の新着情報(@s2terminal)でも著作権についてはたまに言及していますが、まとめたくなったので書いてみました。
著作権について考えるきっかけとなれば幸いです。
合唱音源と著作権
♪まもろう著作権♪当アカウントは時に著作権法に反する音源を紹介してしまう事があるが、決して違法行為を奨励したい訳ではない事を強調したい。
あなたが関連情報を探したりパナムジングしやすいよう、紹介音源には出来るだけ作曲者や組曲名を明記している。決断的な購入で経済を回そう。以上です。
— 合唱音源の新着情報 (@s2terminal) 2014, 11月 1
合唱音源をアップロードする行為は著作権法違反にあたるかどうか?
基本的には合法です。
皆様も御存知の通り、日本の楽曲の著作権はたいてい一般社団法人日本音楽著作権協会 JASRACという団体が管理しています。
そしてYoutube・ニコニコ動画などたいていの動画サイトはJASRACと許諾契約を結んでおります。 そのため投稿者は、楽曲の著作者やJASRACなど誰にも許可を得ずとも、合法的に楽曲をアップロードすることができます。
自ら制作した音源(自ら歌ったものでも、ボカロやMIDI等でもOK)を動画サイトにアップロードするのであれば、特に著作権違反にはあたらないと考えて良いでしょう。
NGなのは下記のケースです。
- 自ら制作した音源ではない
- 他人が演奏している音源を、演奏者の許可無くアップロードする行為はNGです
- 営利目的 である
- Youtubeの広告を貼っている場合もコレに引っかかります
- JASRACと利用許諾契約を締結しているサービスではない
- 有名どころだとSoundCloudが入っていません
- Dropbox、OneDrive等のファイル共有サービス系も入っていません
- これらのサービスを使わず個人のWebサイトへの掲載もNGです(個人で使用料を支払う必要があります)
アップロードされた音源を他のサイトに埋め込み等するのは著作権法違反にあたるかどうか?
これはセンシティブな問題です。
先ほど紹介したJASRACでは、合法的にアップロードされた動画であり、かつ埋め込み先が非営利であればOKとしています。 そのため合唱音源をtwitterで紹介する事も基本的に合法です。
違法アップロードされた動画の埋め込みに関しては際どいですが、実際に下記のような判例があります。
- 違法動画等にリンクを貼ると著作権侵害になる?ならない? | AZX Super Highway(AZXブログ)
- 「ウェブ動画の埋め込み自体は著作権法違反にあたらず」 - 欧州司法裁が判断 - WirelessWire News(ワイヤレスワイヤーニュース)
JASRAC管理されていない音源の著作権の行方
@s2terminal 【知識】この動画冒頭の左上部分にあるマークは「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」と呼ばれる使用許諾条件の表記。この作品は「著作権者の表記(BY)」と「営利目的での利用禁止(NC)」という条件のもと、誰もが自由に印刷・演奏・改変する事ができるという意味。
— 合唱音源の新着情報 (@s2terminal) 2013, 11月 12
楽曲の著作権をJASRACなどの管理団体に委託するかどうかは著作者の自由です。委託しないという選択肢を取ることもできます。
しかしJASRACで管理されていない楽曲を利用したい場合、利用者は著作者に直接許可を取らないといけません。 JASRAC管理楽曲ならばOKだったYoutube等へのアップロードも、すべて著作権法違反となってしまいます。
JASRACによる管理がされておらず、誰がどういう権利を持っているか全く分からない楽曲に心当たりはありませんか。あなたの合唱団にも、誰が書いたのかわからない謎の楽譜が受け継がれていたりしませんか。
それら文化的な財産を利用することで広めよう!という行為が、著作権法違反という理由で阻害される事は悲しいことだと思います。ですが、違法行為は違法行為です。
ここまでを読むと、著作権が一括管理されていた方が、よほど利用しやすいのでは?と思えてしまいます。
一括管理以外に選択肢は無いのでしょうか。
著作権にまつわる問題を回避する選択肢
ここで楽曲の利用者ではなく、著作者側の立場に立ってみましょう。 著作者にとっても、楽曲の著作権が厳密に管理され利用が制限されていることは必ずしも望ましいこととは限りません。
そこで「著作権に縛られること無く、楽曲を自由に利用して欲しい!」 という著作者の意思表示として、下記のような方法があります。
実際には、下記のような例があります。
これらの楽曲は、著作者が提示した使用許諾条件に則っていれば、だれでも自由に、許可無く利用することができます。
パブリックドメイン
いわゆる「著作権切れ」というものです。 例えば冒頭に挙げた三好達治については、2015年で死後50年が経過したためその著作物はパブリックドメインとなりました。
一方で、著作者が存命中に著作権を放棄してパブリックドメインとするのは、なんか色々あって難しいようです。詳細は省きます。
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス
著作権を放棄する(パブリックドメイン)よりも簡単に、「自由に利用してくださいね」という意思表示を行うためのライセンス、それが クリエイティブ・コモンズ(CC)ライセンス です。
下記のような特徴があります。
- CCライセンスは 世界共通
- 使用条件は長ったらしい文章ではなく、たった4種類のマークの組み合わせだけで表現できる
- CCライセンスの付いた著作物は、特定条件下で 自由に利用できる
合唱曲について言えば「改変禁止」が付いていたらその楽曲を演奏するのはアウト(別途許可が必要)ですが、基本的には CCライセンスの楽曲は自由に利用できる 、と考えて良いと思います。多分。 ちなみに CCライセンスの付いている楽譜はコピーするのも合法 です。
残念ながら、合唱曲にCCライセンスが適用されている例を多くは知りません。
最後に
JASRACに代表される楽曲の著作権管理は厳しいもので、賛否もあります。しかし著作者の利益を守るためには必要なものです。
一方で今日IT技術、特にインターネットの台頭で、(合法・違法問わず)著作物のコピーや共有という行為が世に溢れるようになったのは私が説明するまでもありません。
こういった時代の中で 著作権との新しい付き合い方を考えよう というような話で生まれたのが、CCのようなフリー・ソフトウェア・ライセンスです。主 にインターネット上における著作物の利用を促進するために作られました。
しかしこういった考え方は、合唱界において特に広まっているという印象を受けません。
合唱音源の新着情報(twitter@s2terminal)はWebを通じた合唱界の発展を促すため、CCのような"ゆるい"ライセンスとその楽曲を応援しています。 権利者・利用者の双方にとって、よりよい合唱界を。
参考文献
- クリエイティブ・コモンズについて詳しくは:ホーム - クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
- 合唱界で目にすることは無いと思いますが、インターネットを利用する上でもっと色々なライセンスについて知りたい方は:GPLやMITやCCなど主要ライセンスの内容と意味のまとめ | ITキヲスク